相談事例集

Case相談事例集

  • 神奈川県 飲食業 O社(解雇のトラブル)

    「解雇した従業員が、解雇の不当性と残業代の未払いがあると、監督署に申告をした。事情を聞きたいとのことで、監督署から呼び出しが来た。どのように対処したらよいでしょうか。」との依頼について。
    顧問社労士として、事業主と同行して監督署に出頭し、監督官より話を聞き、質問に回答しました。
    解雇については、正確に解雇理由を明示し、法に則った方法で(解雇の予告など)解雇をしたことを明らかにし、また残業代云々については、管理監督者である従業員であったため、労働時間の制限を受けない立場(労働基準法41条該当者)であることなど、従業員側の認識不足の点があり、こちら側の法令等を遵守している姿勢を理解してもらい、一件落着しました。顧問社労士としての存在が、社長さんから大変に感謝されたケースです。

  • 東京都 人材派遣業 M社(残業代未払い)

    「退職した従業員が弁護士名で内容証明郵便を送ってきた。時間外割増賃金の未払い分の請求だという。どのように対処したらよいか。」との依頼について。
    顧問先ではなかったのですが、何度か相談を受けていたこの会社は、従業員の労働時間の管理をしっかりとやっていませんでした。そもそも会社側には、労働時間の管理をする義務があるのですが、この会社はこれを怠っていて、ある意味従業員の自主性に任せているところがあったのです。
    本人のメモによる申告をもとに会社側に“払え”との主張をしているのですが、会社側できちんと管理をしていない以上、反論の余地がなく、従わざるを得ない事となってしまいます。事業主の指示のない、いわば勝手にやった残業だとの主張も、この場合管理をしていない以上認められる可能性は低いと思われます。また、営業社員であったことから、営業手当が支給されており、これはみなし残業手当の意味を持つものだとの主張もあるのですが、就業規則等によって明確にされていなかったことからやはりこれも認められないでしょう。結局はある程度の支払いは避けられないことから、その元従業員と話し合いの場を持ち、妥協点を探ることとしました。
    この会社には以前から再三指摘していたにもかかわらず、社内のルール作りと、法令遵守の制度作りを怠ったことによるトラブルの発生となってしまいました。今後についてこういったトラブルを繰り返さないためにきちんとしたルール作りをし、かつ、無用な割増賃金の発生しない賃金制度作りを推し進めました。未然防止策としての専門家による労務管理の重要性が理解された例です。

  • 東京都 飲食業経営 K社(外国人の雇用)

    「飲食店の従業員として、外国人留学生の方をアルバイトとして雇いたいのですが、その際の注意事項について教えてほしい。」との依頼について。
    まず、原則として、外国人留学生をアルバイトとして採用することはできません。なぜなら、留学生の在留資格は、日本で教育を受けるために与えられるもので、日本で就労することは、本来の目的からはずれるからです。しかし、地方入国管理局に申請し、法務大臣からの資格外活動の許可を受けた外国人留学生は、日本での学業に差し支えのない範囲内で、アルバイトなどの「報酬を受ける活動」をすることができます。ただし、その場合でも、無制限に就労させることはできません。原則として、1日の就労時間は、4時間以内です。もし、1日4時間以上就労させたい場合には、さらに、許可を受けることが必要になります。
    資格外活動の許可を受けた外国人留学生には、資格外活動許可書が渡されていますので、採用時に資格外活動の許可を受けていることを確認したうえで、雇い入れるようにしてください。もし、それを確かめずに、就労資格のない外国人留学生を雇い入れ、就労させると、会社にも罰則(3年以下の懲役または200万円以下の罰金)が課せられることがあります。
    また、外国人留学生がアルバイトとして就労する場合にも、労災保険が適用されますので、外国人留学生をアルバイトとして雇い入れた場合には、日本人のアルバイトと同じく、支払った賃金にかかる労働保険料を申告・納付しなければなりません。ただし、労働保険のうちの雇用保険は、日本人の学生アルバイトと同様に、外国人留学生にも適用されませんので、労働保険料のうち、労災保険にかかる保険料のみを申告・納付します。外国人留学生は、在留期限が限られていますので、雇用保険に保険料を支払ったとしても、掛捨てになる可能性が大きいからです。
    なお、健康保険や厚生年金保険については、日本人の学生アルバイトと同じ要件が適用されます。したがって、アルバイトの外国人留学生等が昼間学生の場合には、社会保険の被保険者にはならないことになります。
    このように外国人の方を雇用する場合には、まず入管法の規制に注意することと、雇用に当たっては、きちんと契約書を作成して、労働条件を明らかにすることの大切さを理解してもらいました。

  • 東京都 保険代理店業 A社(遅刻した日の残業)

    「遅刻した日に残業した者の割増賃金についてですが、どのように扱えばよいのでしょうか?その日に2時間遅刻して出社し、夕方2時間残業をしました。遅刻分の賃金は支払わないとしても、残業分の割増賃金の支払は納得がいきません。」との質問について。
    原則として、遅刻時間と残業時間とを相殺することは可能です。割増賃金の支払が必要となるのは、実労働時間が8時間を超えた場合です。
    ※行政解釈 「法第32条又は第40条に定める労働時間は実労働時間をいうものであり、時間外労働について法第36条第1項に基づく協定及び法第37条に基づく割増賃金の支払いを要するのは、右の実労働時間を超えて労働させた場合に限るものである」(昭29・12・1 基収第6143号、昭63・3・14 基発第150号、平11・3・31 基発第168号)
    しかしながら、就業規則等で“午前9時前の勤務及び午後5時以降の勤務に対しては割増賃金を支払う”などと書かれているような場合には、労基法の最低基準を上回る条件ということになり、割増賃金の支払が必要となりますので、就業規則の記載の仕方に注意する必要があります。

  • 東京都 マッサージ店経営業 R社(退職時の研修費用の返済)

    「会社で費用を援助して資格を取得させたものに対して、資格取得後3年以内に退職した場合は、費用の全額返済をさせる取り決めをしたいが、これは何か問題があるか?」との質問に対して。
    労働基準法第16条により、損害賠償額の予定をする契約を締結することを禁じていますが、このケースの場合は一概には判断することができません。
    まず、会社が一旦費用を負担し、労働契約でその後の一定期間の勤務を義務付け、途中で退職する労働者に対して費用を返還させる旨を定めることは、上記の損害賠償額の予定に該当し、労基法第16条に違反します。
    しかし、労働契約とは別個に、一定期間の勤務やその状況により費用の返済を免除するという特約つきの金銭消費貸借契約を締結して会社が費用を立て替える場合には、原則として労働者は金銭消費貸借契約に基づき、立て替えてもらった費用についての返済義務を負っており、一定の条件を充足すればこの義務を免除されるというものなので、法第16条に違反しないと考えられます。
    ただしこの場合でも、①費用の計算が合理的であること、②費用の返済によりいつでも退職できること、③労働契約が雇用関係の継続を不当に強要する恐れのないこと、などを併せて満たすことが必要になります。
    また、業務と区別されることも必要とされます。つまり、資格の取得が業務の遂行に不可欠なものであり、その資格の取得を義務付けているような場合は、資格取得が業務と密接に関連していることになり、たとえ金銭消費貸借契約を結んでいたとしても、事実上3年間の勤務を強制していると認められる場合もありますので、充分注意が必要です。

  • 神奈川県 製造業 D社(年休の計画的付与)

    「当社では新入社員に対して入社時に5日、6ヶ月経過時にさらに5日の年休を与えているが、年休の取得率が低いこともあり、お盆休みとして、5日間の年休の計画的付与をしている。ところが、4月に入社した新入社員の場合、この計画的付与で5日の年休がすべて消化されることになってしまいます。このような場合、別途年休を与える必要があるのでしょうか?」との質問に対して。
    中小企業などでは、せっかくの年次有給休暇も実際にはなかなか消化されないケースも多々あります。そこでこのように年休の一斉消化という形で、計画的付与が行われるケースがあります。
    このD社では、入社時に即5日間の年休を与え、6ヶ月経過後にさらに5日の年休を与えるというやりかたで、こういった与え方ももちろん認められます。いわば、労基法の基準を超えるやり方であるとして有効なわけです。
    しかしながら、計画的付与を行う場合は「5日を超える部分について労使協定の定めにより計画的に年休を与えることができる」となっています。法の基準を超えて与えたとしても、与えた以上は年休ですので、上記規定は守らなければなりません。
    つまり、少なくとも5日は労働者の自由な取得分として残しておかなければならないという主旨ですので、年休の日数が5日しかない新入社員の方をこの計画的付与の対象とすることはできません。
    ですから、新入社員の方には特別の休暇を与えるか、年休の日数を増やすなどの措置を講ずることが必要になります。また、このような措置をとらずに休業させる場合には、労基法第26条に基づき、休業手当の支払が必要になります。

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